「人を替える」のではなく「考え方を進化させる」

──業務停滞を解決した現場改善の実例

「業務がうまく回らない。会議では不満ばかりが出てくるんです。」

ある組織から、そんな相談を受けました。

話を聞くと、現場では従業員同士の対立が激しくなっていました。

「なぜ仕事が終わっていないのですか」
「期限ぎりぎりまで仕事を溜め込む」
「私たちは、その後工程なのに時間が足りない」

会議は次第に責任追及の場になり、空気は悪化する一方。
この状況を何とかしてほしい、というのが依頼でした。


目次

全員にヒアリングして見えてきた“意外な事実”

まず行ったのは、約10人のメンバー一人ひとりへのヒアリングです。

すると驚くことに──
誰もが自分の担当業務には真剣に向き合っていました。

  • 役割は理解している
  • 遅れると会社に迷惑がかかることも分かっている
  • 手を抜いている意識はない

しかし、共通していたのは、次の点でした。

「自分の仕事の“次”を、誰がどう処理しているのか知らない」

つまり、

  • 他の人が何を担当しているのか、聞かされていない
  • その作業が終わったあと、どう次工程につながるのか共有されていない
  • 全体の流れが見えていない

その結果、下流工程の人はこう感じます。

「上流側で仕事を止めている」
「最後にまとめて流されて困る」

一方、上流側の人は、

「自分の作業期限は守っている」

と思っている。

悪意ではなく、“構造が見えない”ことが摩擦を生んでいたのです。


解決策は「業務の見える化」

そこで行ったのは、シンプルですが効果の高い施策でした。

1か月分の業務をすべて書き出す

  • どんな業務があるのか
  • 誰が担当しているか
  • いつまでに終える必要があるか

これを一覧表にまとめました。
いわば全員共通の業務地図です。

この表を見た瞬間、
一番不満を口にしていた人が言いました。

「これが欲しかったんですよ!」


TODOリストとして共有する

一覧表は、共有ファイルとして全員が見られる形にし、

  • 自分の業務が終わったら「済」と記入
  • 誰の仕事がどこまで進んでいるかが一目で分かる

いわゆる全体連動型のTODOリストです。

もちろん、最初からうまくいったわけではありません。

  • 終わっているのに「済」を入れない人
  • 期限を過ぎてしまう人

そこで、個別に丁寧に声をかけ続けました。

「この業務は終わっていますか?」
「では、“済”にしていただけますか?」
「日付が適切でなければ、日付を変えましょう」

このやり取りを、根気よく何か月も続けました。

すると次第に──
このツールは「特別なしくみ」ではなく、
日常の当たり前の仕事の一部になっていったのです。


変えたのは「人」ではなく「考え方」

今回の改善で行ったのは、
誰かを配置換えしたり、叱責したりすることではありませんでした。

変えたのは、人の考え方でした。

  • 業務は自分のところで完結するわけではない
  • 次の誰かにバトンが渡る
  • その先に全体のゴールがある

それが“見える化”によって実感できるようになったのです。

すると、

  • 「まだ終わらないんですか?」と怒鳴らなくても済む
  • 会議で責め合う必要がなくなる
  • 自然と周囲の工程を意識するようになる

職場の空気も、驚くほど変わっていきました。


業務の進化は、人の心の進化につながる

人は気づきます。

強い言葉で管理しなくても、
しくみが整えば、協力して仕事は進む。

そして、

  • 自分の仕事は誰かにつながっている
  • みんなで目標に向かっている

そう実感できたとき、
組織は単なる作業集団ではなくなります。


■まとめ

この事例が教えてくれるのは、次の3点です。

  • 問題の原因は「能力」ではなく、「構造」にあることが多い
  • 業務フローの見える化は摩擦を減らす
  • 人を替えるより、考え方を進化させた方が組織は強くなる

業務の進化とともに、人の心の進化を実現する。

それこそが、働く場の幸福感を高め、
組織の成果を最大化する鍵なのかもしれません。

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